DNA


「レナ、俺と結婚しよう!」
 マサシがいきなりそう言い放った。しかも2限目と3限目の休憩時間。ムードもへったくれもない。
「は?」
 私はそう答えた。しかしマサシはそのまま
「俺、昨日夢を見たんだ。お前と結婚して幸せな家庭を持っている夢を。だから決めたんだ。結婚しよう、レナ。」
 マサシは変わり者だった。
どこがどうとは言えないのだが、彼の出す雰囲気が言動がそう思わせているんだろうと私は思っている。
しかし彼は成績も上位だし、ルックスも(私はあまり思わないけど)上位の方らしい。
だからもちろん私の周りにもマサシがいいって言ってる子はいる。どう見ても不相応だけどもね。
「ねぇ、マサシ。アンタ頭悪い?夢で見たって、ナニソレ?」
 私はそう言い放った。だって夢って。その時は適当な言葉で話題を変えておしまいにした。

 3日経った。
 ……。マサシは変わらなかった。
「レナ、いきなり結婚は俺が焦りすぎた。まずはお付き合いってやつから始めよう。それならいいだろ?」
「馬鹿かお前は。最低な告白だな。答えはノーです。残念でした。」
「そんなに照れるなよレナ。わかってるんだぜ。」
「照れてないし、わかってない。残念でした。」
 自分でいってて恥ずかしいが、こんな会話をやりあっていたのだ。
まったく、本当にマサシの思考回路がわからない。
皆が付き合っちゃえばとか言うんだが動機が不純(?)てか、タイミングとか、な?とか思うし。


 変化はいきなり訪れた。滅多に休む事の無いマサシが学校を休んだのだ。……。ちょっと心配になった。
 次の日、マサシは来た。なんだか浮かない顔をしてるので私はそっと近づいて
「よ、マサシ、元気になった?めずらしいね、マサシが学校休むなんて。」
 そんな私の言葉にマサシの意外な答え。
「……。俺、お前につきまとうのやめるわ。いままでつきまとっててごめんな。」
「は?」
 私はそう答えた。しかしマサシはそのまま
「俺、昨日夢を見たんだ。お前と結婚して幸せな家庭を持っている夢を。」
 毎日聞かされるセリフなのでききあきたんだけど、今日は次が違った。
「でも、2回みて思ったんだ。お前に悪いと。お前の意思無視してたんだよな。
夢の中のお前さ、よく見たら笑ってなかった。幸せだと思ってたの俺だけだったんだ。ゴメンな。」
 マサシは変わり者だった。
その日からあれだけウザかったアプローチがプツリと消えた。
周りの女達はチャンスとばかりにマサシの周りに寄ってきた。
マサシは優しい笑顔で受け応えしていた。……。少し寂しくなった。

 その日夢を見た。マサシと結婚して幸せな家庭を持つ夢を。マサシは笑っていた。
「あ、これか。……ちょっと遅かったかな、気付くの。」
 目が覚めてそう呟いて泣いた。



「レナ、結婚しよう!」
マサシがいきなりそう言い放った。しかも2限目と3限目の休憩時間。ムードもへったくれもない。
「は?」
 私はそう答えた。しかしマサシはそのまま……もういい。
「俺、昨日夢を見たんだ。お前と結婚して幸せな家庭を持っている夢を。今度はお前も笑ってたんだ。だから結婚……。」
「もういい。」
 私はマサシの言葉をさえぎった。私の答えはもう決まっていた。

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